群馬県沼田市の「福田ぶどうマルシェ」は、おいしいぶどうを育てるだけでなく、訪れる人々に特別な感動を与える観光農園です。その背景には、脊髄の病気で車椅子生活となった智美さんと、夫の靖さんがともに夢を追い続けた物語があります。
「できないことより、できることに目を向ける」という前向きな姿勢で、困難を乗り越えながらも農業の道を切り拓いた2人。この農園では、自然の恵みを感じると同時に、夫婦の絆と希望に満ちたストーリーに触れることができます。この記事では、「福田ぶどうマルシェ」の魅力と、夫婦の挑戦の歩みを詳しくご紹介します。
群馬県沼田市に広がる福田ぶどうマルシェとは？
群馬県沼田市に位置する「福田ぶどうマルシェ」は、自然に囲まれた観光農園であり、訪れる人々に特別な体験を提供しています。この農園の最大の特徴は、誰もが安心して楽しめるバリアフリー設計と、独自の栽培方法で育てられたおいしいぶどうです。甘くジューシーなぶどうが並ぶ農園内は、のどかな田園風景の中で癒しのひとときを提供してくれます。
福田ぶどうマルシェでは、子どもからお年寄り、車椅子の方まで、すべての人が安心して訪れることができる環境が整えられています。車椅子でも収穫体験が可能なレイアウトや、ゆったりとしたスペース設計が特徴です。訪れる人々は、この農園を通じて自然の恵みと夫婦の温かな想いを感じることができるでしょう。
農園誕生の物語 ～夫婦の挑戦と決断～
東京での出会いと夢のスタート
「福田ぶどうマルシェ」を開いた福田智美さんと靖さん夫妻は、もともと東京で多忙な日々を送っていました。智美さんは「国立がん研究センター研究所」に勤務し、医療研究に携わる一方で、靖さんは「国立感染症研究所」の獣医師として活躍していました。そんな中、靖さんが趣味のスキーで訪れた山梨県でぶどう農家を手伝う経験をしたことで、「農業への夢」が芽生えました。
その後、夫婦はぶどう栽培に興味を持ち、休日を利用して農家を手伝う日々が続きました。やがて、「定年後ではなく、今しかない」という決意が固まり、仕事を早期退職して農業の道に進むことを決意します。この決断には、長年培った仕事のスキルだけでなく、夫婦で一緒に新たな挑戦をするという強い絆があったのです。
苦難を乗り越えた移住への道
しかし、新しい一歩を踏み出す直前、智美さんを突然の病が襲いました。脊髄髄内腫瘍と診断され、手術とリハビリを経て、車椅子の生活を余儀なくされます。この予期せぬ試練の中で、夫婦は夢を諦めるか否かの決断を迫られました。そんな時、靖さんが提案したのが、群馬県沼田市への移住です。
「今の環境にとどまるのではなく、新しい土地で新しい生活を始めるべきだ」という靖さんの言葉に、智美さんは「新しい挑戦をしてみたい」と応じました。こうして、夫婦は2017年に沼田市へ移住し、農家で研修を重ねながら知識と技術を習得。2019年には、ついに念願の「福田ぶどうマルシェ」をオープンしました。
福田ぶどうマルシェの栽培と工夫
独特の栽培法で育てられるおいしいぶどう
福田ぶどうマルシェでは、日本の雨が多い気候に対応した「透明シート栽培法」を採用しています。この方法により、ぶどうが雨に直接さらされるのを防ぎ、病気や害虫の被害を抑えることができます。また、ぶどうの高さは車椅子に座ったままでも手が届くように調整されており、智美さんが主体的に作業できる仕組みになっています。
さらに、栽培するぶどうの品種は甘味と酸味のバランスが取れたものを厳選。晴れた日の青空の下で食べるぶどうは格別で、訪れる人々からも高い評価を受けています。
訪れる人々への配慮と体験型農園の魅力
観光農園としての魅力は、単なる収穫体験にとどまりません。農園内はバリアフリー設計で、足の不自由な方や小さな子ども連れの家族でも安心して楽しむことができます。また、ぶどうの収穫体験や試食イベントを通じて、来園者は自然と農業の楽しさを実感できる工夫が施されています。
福田夫婦の現在 ～趣味と人生を楽しむ姿～
農閑期に広がる趣味と新たな挑戦
現在、農閑期を迎えた福田夫妻は、それぞれ趣味の時間を大切にしています。靖さんは模型造りに没頭し、智美さんは好きなアーティストのライブやアマチュア交響楽団でのバイオリン演奏に熱中。また、新たにチェアスキーに挑戦するなど、積極的に新しい体験を楽しんでいます。
このようなライフスタイルからは、どんな困難に直面しても、趣味や新しい挑戦を通じて人生を豊かにする姿勢がうかがえます。
夫婦の姿が教えてくれる人生のヒント
智美さんは、「できないことよりも、できることに目を向けることの大切さ」を体現しています。観光農園の運営だけでなく、趣味や地域との交流を楽しむ夫婦の姿は、私たちに希望と前向きなエネルギーを与えてくれる存在です。
結び: 福田ぶどうマルシェで触れる夫婦の物語
「福田ぶどうマルシェ」は、単なる観光農園ではありません。その背景には、夫婦の試練と挑戦の物語があります。この農園を訪れることで、おいしいぶどうを味わうだけでなく、夫婦の温かさや希望のメッセージを感じ取ることができるでしょう。
次のシーズンには、ぜひ「福田ぶどうマルシェ」を訪れ、自然の恵みと感動の物語を体感してください。群馬県沼田市で待っているのは、特別な時間と夫婦が紡ぐ優しさに満ちた世界です。
